今日は私の遅い夏休みの1日目。楽天マガジンが、渋谷の楽天モバイル 渋谷公園通り店で行ったイベント【MONOQLO検証の裏側大公開トークセッション】に参加してきました。
雑誌「MONOQLO」は、晋遊舎が発刊している「モノの批評誌」で、特徴としてメーカーからの広告を掲載せず、徹底した検証テストをもとに独自の評価を行っています。
ベストバイ(評価が高かったもの)だけではなく、ワーストバイ(評価が低かったもの)など通常のメディアではなかなかできない批評を行っていて、個人的にも愛読しています。MONOQLOでおすすめされたものをそのまま購入することもしばしばです。
「MONOQLO 」だけでなく、「家電批評」「LDK」といった晋遊舎の雑誌は楽天マガジンやdマガジンで読み放題で読めます。私はビュワーの使いやすさの観点から楽天マガジンを利用しています。
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MONOQLOベストバイに囲まれながらのトークショー
会場には、いろいろなMOQLOベストバイ商品が展示されていました。実際に試したり、QRコードから楽天市場で購入できたりいろいろ工夫されていました。主な商品は後半でご紹介しようと思うのですが、まず目に飛び込んできたのはステージに用意されえていた登壇者用の椅子。イームズだな、と思っていたらこれすでにMONOQLOベストバイ製品でした。
手前のパッチワーク柄の椅子が「オーガニックチェア(三日月家具)」、奥の2脚は有名な「イームズ シェルチェア(リホーム)」ですね。どちらもイームズのリプロダクト品*なので、手ごろな値段で名作チェアが入手できます。シェルチェアの方は、座る部分の素材と脚を180通りの中から自由に組み合わせられるという優れもの。
デザインに対する版権期限が切れた製品を、オリジナルをベースに再生産したもの
演出も、そして椅子のクオリティもナイスだったね!
はい、まず1つお買い上げ~
今回ご登壇されたのは、左から
- MONOQLO編集長 浅沼伊織さん
- LDK事業部長 木村大介さん
- LAB.360室長 松下和矢さん
のお三方でした。浅沼さんは今年8代目のMONOQLO編集長に就任された方。木村さんは3代目のMONOQLO編集長であり、現在は女性向け雑誌の「LDK」および姉妹紙の「LDK for Beauty」の三代目編集長も兼務されているそうです。松下さんは、晋遊舎の各批評誌のテスト・検証を行う専門ラボ「LAB.360」の初代室長に就任された方で、以前はメディア関連の試験機関に勤務されていたそうです。
内容は、事前に受け付けていたアンケートの質問に答える形で進んでいきました。箇条書きですが、内容をまとめてみました。
MONOQLO創刊のきっかけは?
- 「この通販、本当かよ?」創刊編集長の西尾 崇彦さん(MONOQLO 創刊編集長)が深夜の通販番組を見ながら思った疑問がきっかけ~ 「車が切れるカッター」「なんでも落とせる布巾」「ものすごく切れる包丁」
- 雑誌のいちコーナーとして掲載してみたところ、非常に評判が良かったため、雑誌として創刊することになった
特集・第2特集などのテーマはどうやって決定しているか
- 新製品が登場するときにCMや広告が行われるが、それを見て「本当にそんなに良いのか?」と思って取り上げることが多い
- 季節性のあるもの(年末年始の大掃除)も消費者が情報を求めているタイミングなので、取り上げることが多い
- 世の中や、他の雑誌が取り上げている切り口を俯瞰してみた時に、別の切り口を探してみることから特集ネタが生まれることも
- 評価対象製品は、店頭やTV番組(ワールドビジネスサテライトなど)、雑誌、ネット、ツイッターなどを幅広くチェックして決めている
検証方法・判定項目はどうやって決める?
- まず、日本工業規格(JIS)の試験方法・他の業界の試験基準書を参考にテスト項目を考える
- 次に、雑誌紙面を考え、一般消費者の心に刺さるデータ・紙面に掲載してビジュアル的に映える、エンタメ性のある試験項目を考える
- 例えば掃除機のテスト項目に「1m 四方に砂を撒いて吸い込む」というのがあるが、日本では靴を脱ぐ生活なので、一般家庭にはそんなに砂を吸い込む需要がない。「掃除機を動かす早さ」は基準書のものを使用し、吸い込む対象物はスナック菓子・コーヒーの粉・髪の毛など日本に合わせた内容のゴミを使用している
MONOQLOとLDKでの評価が違うことがある:どっちを信じれば良い?
- 想定読者の違いで、結果が異なる。ざっくり言えばMONOQLO = サラリーマン、家電批評 = 家電に詳しい人、LDK = 主婦
- 洗濯の場合は一般財団法人洗濯科学協会の汚れ布という汚れの基準になっている布(基準布)がある。それは使用する
- しかし、それに加えてターゲットユーザに合わせた追加のテストを行っている。MONOQLOの場合はサラリーマンが想定ターゲットなのでコーヒー、ボールペン、LDKの場合は主婦なので、食べかす、子供の泥汚れなど
- 同じ製品ラインナップのテストでも、評価方法や評価項目が異なる
「この検証辛かった…」という製品は? MONOQLO編集部編
- ライザップの検証がキツかった。締め切り中や締め切り後のキビシイ時にもハードな糖質制限と筋トレをしなければならず、道端で吐いたことも(!)
- ライザップの検証の直後に今度はカルディの全食品の実食レビューをしなければならず、せっかく10数キロやせたのに、即リバウンドしてしまった
- 覆面調査はかなりヒリヒリすることが多い。無印良品の調査でカメラマンを同行して商品写真撮影やメモ取りをしていたところ「店内での撮影はお止めください」という店内放送が何度も流される事態に…
- 覆面調査は非常に好評なのだが、非常に気を使う。決して誇張しないように、事実だけ書くことを重視している。話を膨らませたら絶対にダメ
- 検証は1テーマを1日で完了させるものが多いが、美容液などの実際に長期間使用しないと結果が出ないものが増えてきた。
- 例えば、トースターの比較の時は担当編集者は2カ月パンを焼き続けた。ロボット掃除機の場合マンスリーマンションを借りて、1カ月ロボット掃除機と暮らしてもらってリアルな生活の中での使用をレポートしたりとか
「この検証辛かった…」という製品は? LAB.360編
- ラボとしては、物・人・場所を確保するのが大変。例えば扇風機の却効果を検証する時は、 部屋の温度・湿度が一定に保たれた環境で行う必要がある。そこに被験者に来てもらって検証するのが大変
- 社内のラボ(LAB.360)を使用する場合でも、同じ製品であっても雑誌によって異なるテストを平行して進めるために、このスペースはMONOQLO、こちらはLDK Beauty、こちらは家電批評といったように社内でかち合ってしまいやりくりが難しい場合もある
- 時間の制約も大きい。1回10分で終わるテストでも、30製品行えば検証だけで300分(5時間)かかる。 どんな企画ても、楽だった検証というものは、ない
- 一番つらかった検証:包丁。「包丁をまな板に3,000回こすりつける」というテストを行ったときに、当初は自作の機械でモーターを使って3,000回こすりつける「包丁きこきこマシン」で行うはずだったが、かなりの負荷がかかってうまくいかず、結局は自分の手で行うことに。15時間に及ぶきこきこは、自分を無にしないとできなかった…
出禁(出入り禁止)になっているメーカーは?
- あるメーカーがルンバに対抗してロボット掃除機を出したが、広告の内容と異なる検証結果が出たので、ひどかったので、そのまま書いた。後日、メーカーからクレーム。経緯を説明したが「結果はともかく書き方がひどい」と納得してもらえず、今でもそのメーカーはTVなど貸し出しに応じてもらえない
- 当時大ヒットしていた国産の家電メーカーの液晶TVについても忖度なく評価をしていたら、編集方針に賛同が得られず出禁に…しかしそのメーカーの液晶TVなしにレビューは成立しないので、編集部にやたらそのメーカーの液晶TVが並ぶ事態に
- 基本的にテスト誌としてやらざるを得ない場合は購入してテストするので、出禁になってもテストはするし、そこで結果が良ければ正しく評価する
- 編集部は、編集部が定めた検証項目と検証方法に従って公正に評価する。ある製品の評価が低くても、同じ会社の別製品がベストバイになることはよくある
- 通販サイトやソーシャルメディアでの口コミが重視されるようになってきているので、批評誌での評価に対するメーカーの理解が進んできていると感じる
本当にメーカーからお金はもらってないの?/どうやってお金を稼いでいるの?
- 協賛・タイアップの話は多いが断っている(広告代理店から、かなりの金額を提示されて「いくら払えばベストバイにしてくれますか?」みたいな話も…)
- 購入してテストする商品も多いし、LAB.360も新設したりしているので、正直原価率が非常に高い=コストは非常にかかっているので、経営は楽ではない
- 一方で、「MONOQLOベストバイ」マークについては、ビジネスになると感じている。公正に審査した結果として、消費者にとって良いものだ、という商品についての保証のようなものなので、この仕組みは今後も活用したい
モノの批評誌の編集部員としての職業病は?
- 自分の好みや趣味とは別の目線で商品を見るようになってしまっている。CMや通販番組やお昼の情報番組は必ずチェックするが、自分が興味ないようなものでも、特集や企画に活かせないかという目線で見ているのに気が付く
- 電車の中でスマホを操作している人が何をチェックしているのかを見てしまう
- ラボ担当としては、商品を見た時にパッケージのうたい文句やキャッチコピーなどよりも、材質や成分表をチェックして「この材質・成分ならこんなテストで差がでるかなぁ」と考えてしまう
その他のエピソード
- ラボができる前は、例えば洗剤のテストなどは一般のコインランドリーに大量の洗剤と汚れた衣服を持ち込んで一日中洗濯していたので、警察に通報されたことがあった
- ダイソンのスティック掃除機がサイズがどんどん大きくなったことがあった。LDKの評価基準では、収納や取り回しも重要視されるため、評価が下がった。その時、ダイソンの技術者がなぜ評価が低いのかを来日して尋ねに来たことがあった(!)。
- しっかりと、評価方法・評価基準などを説明したところ、エンジニアと非常に良いディスカッションになり、日本市場への理解が進んだと感謝された
トークショーの内容はこんな感じでした。いやぁ、想像していた以上にご苦労が多いですよね。その代わり、読者の信頼も厚いと思いました。最後に、お三方とも「編集部でおすすめした商品を買った方から『買ってよかった!』と言ってもらえるのが一番うれしい」とおっしゃっていたのが印象的でした。
MONOQLOのベストバイがずらっと並んだヤバいイベント会場
改めて会場ですが、楽天モバイル 渋谷公園通り店の3Fが期間限定で「MONOQLO LOUNGE」と言うスペースにイベント会場になっています。そこにMONOQLO本誌のベストバイ製品が一杯展示してありました。
会場の奥手から入り口方向を観たところ。YOGIBO MAXと同YOGIBO SUPPORTがどーんと出迎えてくれます。靴を脱げば、すべて実際に試しに寝てみることが可能です。
各社の人間をダメにするソファが並んでいます。奥に見えているのがLOWYAの「ソファベッド」で、こちらは別に下記のような分解展示もされていました。
お買い上げ決定2品目はこちら。LOWYAの大型ワンタッチポップアップテントです。これ、幅が200cm x 奥行275cmもあって大人2人がらくらく寝られますが、ポップアップ式なので設営10秒くらい(片づけるのはコツがいりますが、わかりやすいビデオ解説ありました)。重さも2.6kgしかなくて、小さくまとめれば女性でも軽々持ち運べます。
前後フルオープンにして風を通したり、メッシュにして通気は確保して虫よけすることもできますし、ランタンフック・2か所の収納ポケット、施錠用のカギも付属など、細かいところまで良くできてます。これ購入決定!
他には、毛先にこだわり歯や歯肉を傷つけず、コシのある毛材でできた歯ブラシ「タフト24」や、コンパクトなのに迫力ある音を鳴らす「A107」も展示されていました。購入3品目として歯ブラシ購入しました…
一番奥には、「自立式ポータブルハンモック」も展示されていました。これ実売約9,000円くらいとかなり安いですベストバイ。自立式なので、ハンモックをつるす木を探す必要も、固定も不要。これも惹かれますねぇ。
こんな風に、決して広い空間ではないのですが、魅力的な展示が目白押しでガジェット好きとしてはマジでヤバかったです。
通販でも、試して買いたいものもあるから、これ危険すぎるよね
QRコードで直接楽天市場の販売ページに直結してるってヤバくない?
この魅力的で危険な展示のインテリアコーディネートを担当された「おうちデトックス」の代表で、整理収納アドバイザーの大橋わかさんが客席に座っていらっしゃいました(女性を下から撮影するのは恐縮なのですが、この角度でも素敵な方でした)。
最後に
- 会場の一番前で写真を撮影しながらお話を伺っていたのですが、質疑応答の際に、編集部の方に「非常にMONOQLO読者らしい感じの方ですね」と言われてしまいました。 ピークデザインのアンカーが付いたSONY α7IIIで撮影し(浅沼編集長もα7IIIユーザーでいらっしゃるそうです)、首にはSONY WH-1000MX3を下げ、iPhoneでメモを取っていればまぁバレバレですよね。嬉しかったです。
- 私事ですが、元アスキーの編集者として、当時はパソコン雑誌の編集者、それもMacPowerにあこがれて入社したのですが、今だったらパソコン誌にはいかず、まさに晋遊舎さんの作られるようなモノ批評誌の編集者を目指したのかもしれません(雇ってもらえるかどうか別ですけど…)
- イベント終了後、会場にいらっしゃった晋遊舎の方とお話させていただいたのですが、その方はこの春の新卒の方でした。昨今、雑誌不況と言われていますが新卒採用されているのはすごいですね。雑誌としても勢いを感じますし、消費者としてもすごく楽しみです。
- その方には「YouTubeチャンネルでも、ポッドキャストでも良いので、読者との接点をもっと持っていただけると愛読者として嬉しい 」 とお伝えしました。あと「Monoqlo/LDK/家電批評のベストバイだけを購入できるリアルショップとかできたら、通販に抵抗ある人にも利用されるかも 」 と。
- なにしろ、いち家電・ガジェット系ブロガーとして学びが多かったです。レベルの差はあれ、商品に対して個人の中で評価軸を設けてTop 10とか、ベストとかを決めているシーンがあります。やはり、大事なのはターゲットユーザー(読者)の明確な想定と、それに基づいたぶれない評価基準であると学びました。なかなか編集部の方のお話がきける機会なんて少ないので、参加して本当に良かったです!